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           メール・マガジン

      「FNサービス 問題解決おたすけマン」

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    ★第172号       ’03−04−11★

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     シグマ、Σ、σ?

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●家電の世界で<松下さん>

 

の名が輝かしかった頃ご愛顧賜わったサーモ屋としては、先夜のテレビ

東京<ガイアの夜明け>「現場力を高めよ」<松下電器ものづくり復活

への道>に心が痛みました。

 

冒頭の1シーンは、「工場長など平均年齢50歳の工場トップ30人を

集め年間30日の研修。 品質管理の基本に始まり、、」と教室の風景。

 

講師が「、、ちょうど富士山の形に、、」と白板の正規分布曲線を解説

している。 え?富士山? まるで幼稚園。 そして「シグマ、、」と

言いながら<Σ>を書き、「この辺からちょっと皆さん不得意、、」、、

 

「この辺」って、未だ<入り口>でしょ? それがもう「不得意」じゃ、

先の見込み、ありませんな。 しかも呆れたことに受講者誰一人、その

言葉を否定しない。 それどころか、懸命にノートしてる!

 

まさか、ご存知なかった? 疑いました。 大文字Σは<総和>の記号、

高校生の知識、得意も不得意も無かろう。 が、この講師、アチコチで

<ご存知ない>人々を見て来たからそう言ったに違いない。

 

「平均50歳」、あまり昔のことで統計数学お忘れになったか? いや、

その立場の人なら年齢無関係、毎日<品質>に取り組んでいるはずだし、

そもそも「知らない」では務まるまい。 

 

推察するに流行?の<シックスシグマ>、それは小文字σですが、つい

連想して少し憂鬱になっていたか? いずれにせよ、その程度のことが

「不得意、、」な人が<工場トップ>では松下さんの<品質>、大いに

懸念あり。 昔はそんなじゃなかったが、、

 

 

EM法講師は松下さんにご縁がなかったので、これは他社での体験から

申すことですが、どこでも遠からずそんなことになるだろう、とは私も

予感しておりました。 実は

 

EM法を解説する際、製造業なら品質管理の話題に重ねると具合が良い

のですが、90年代、それが急速に通用しなくなって来ていたからです。

 

たとえば(QCの)××場面で、、と喋りながら見渡すと、曖昧な表情

の受講者がチラホラ。 そこで尋ねる、「QC研修など、御社では?」。

と、果たせるかな「いいえ」。

 

 おいおい、QC教育なき製造業? マジ? こりゃ<当社の品質>、

 永くは維持できまいな、、

 

もちろん直ちに別の事例で代え、私の解説に支障は生じませんでしたが、、

 

 営々たる品質努力によって高いブランドを築くことに成功した諸先輩、

 後輩の育成には成功なさらなかったようで。 嗚呼、守成は難し、、

 

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●<TQC>は文字通り

 

<全社運動>、イヤ応なく強いられて嫌いになった人も少なくなかった

し、普通<やってはいるが形だけ>でした。 しかも

 

することや狙いは企業ごと職場ごとに違うので、せっかくの経験がほか

で役立つとは限らない。 でも、よく見ればその基礎になる統計数学は

普遍的原理。 即ちSQCは、身に着ければどこでも応用自在、、

 

その点は Rational Process 同様。 違うのは、数式や表が色々あって

ヨクワカラナイ、オボエラレナイ、使い方がムズカシイ、という点。

 (Rational Process はシート式、オボエル必要なし。 <おたすけ

  マン>の無料サポートもあるからすぐワカル。 ムズカシくない)

 

かのジャック・ウェルチもQCをそう感じていたようです。 彼の自伝

<わが経営>(上・下 日経 2001年)によれば、 

 

 「品質向上プログラムはスローガンばかり大げさで、

  その成果はほとんど上がらないものだと考えていた、、

 

  、、あまりに理論を追いすぎていたために、私はこれを

  全社的なイニシアチブにしようとは思わなかった。」

                         (下 p.166-7)

 

<シックスシグマ>の権威を招いて幹部170人と共に4時間の講義を

受けた際には、

 

 「出席者のほとんどが、私も含めて、統計の専門用語がよく理解でき

  なかった。、、当日このセッションを聞いたほとんどの人間は、

  統計にかんする理解が足りなかったことに、、もどかしさを感じは

  したものの、このプログラムの可能性には大いに心を動かされた。」

                          (下 p.169)

 「クラスでは紙飛行機を、、飛ばし、、着地するのを観察することが

  <バラツキ>を理解する第一歩だった」 (下 p.171/2)

 

という。 やれやれ、松下さんだけじゃなかったか、、

 

 

そんな?GEが<シックスシグマ>で大きな成果を収めることが出来た

のは、トップ・ダウンのリーダーシップゆえ。 品質問題を解決せねば、

というトップ自身の強烈な願望が全社を動かした。 即ち (p.168/175)

 

ウェルチ自身が信奉者となってその導入に着手し、担当中心人物を二人

指名。 各事業部門には最高の人材をこのプロジェクトの専任とさせ、

 

1996年に立ち上げて 「2000年には、GEのエグゼクティブ・バンドに

入っている人材の15%が<ブラックベルト>、、2003年には、、40%」。

最初の1年で3万人を訓練し、その費用2億ドル、、

 

元祖モトローラで10年かかったのを5年で、、と遮二無二突進させる

なんて、カリスマ経営者だから可能、ボトムアップ式では望めません、、

 

となると我が国向きではない、と思われる<シックスシグマ>ですが、

そのもとは日本だと言う。 さて、、?

 

*   *

 

<シックスシグマ>の体験は無いので文字情報に頼るのみですが、その

本の p.181、ウェルチ自筆(署名は無いが前後関係で)と思われるメモ

の図解に沿って言えば、<富士山>を極度にまで尖らせる努力、とでも。

 

だったら、サーモ屋もやってましたよ、きわめて素朴に。 何せ我々の

主戦力は<家庭婦人>、ムズカシイ話は一切禁物でしたから。

 

指示に忠実、仕事に熱心、そして何よりプライドが高い彼女ら、ヘマを

させるわけには行かない。 そのため作業の単純化に励み、指導を徹底

したが、<品質管理>とは敢えて言わない。 単に<作業の一部>。

 

即ち、要素作業各段階で<数値データ>を誤り無く集め、<平均値>と

<標準偏差>を記録させる。 折良くカシオ<AL−10>なる簡易な

関数電卓が登場、一見フツー、値段もフツー並みだが、算出ワンタッチ。

 

当時(瞬間風速的)世界最高品質のサーモスタットを生み出した<我が

社の品質管理>は、この2種類の数値を追い詰めるだけのものでした。

 

*   *   *

 

サーモスタットは<温度の変化に感じて開閉するスイッチ>。 電気的

性能や耐久性も大切ですが、肝心なのは作動温度。

 

我が社主力のディスク・タイプ(72号、158号既述)の場合、受注

ごとに異なる<開>側の上限・下限、<閉>側の上限・下限、計4段階

の範囲で作動しなくてはならない。

 

それには、温度センサー兼アクチュエーターのバイメタル・ディスクと、

ディスクの動作を電気回路の開閉に変えるスイッチ部と、の間の微妙な

<力>と<距離>の関係をキビシイ範囲に安定させなくてはならない。

 

それには、、 で、製造の流れに沿ってあらゆる手がかりを求め、まず

部品レベルで、以後組み立ての各段階で、<手がかり>の平均値や標準

偏差を監視しつつ<品質>を積み重ねて行く独自方式を編み出した次第。

 

そして限界を外れたもの、即ち(Rational Process は未だ無かったが)

PAの IS、 については、どこが違う?、その違いは何?、いつから?、

と徹底的に調べ、その違いを無くすれば限界に収まるようになるものか

実験して確かめ、その結果を工程や設計にフィード・バック、、、

 

で明け暮れするうちにノウ・ハウが固まり、やがて最終品質は<狙い>

の中央にそびえる尖った山に収まるようになる。 良品率100%!

 

作る、測る、の器具や設備は同じ、追加投資は<電卓代>のみ。 ロウ・

コストでハイ・リターンの、<オリジナル6σ>と言うべきものでした。

 

*   *   *   *

 

お客様も、初めは(当然)受け入れ検査なさるが、いくら調べても良品

だけでツマラナイ、温度検査は特に面倒、じゃ省こう、となる。 即ち

コスト削減貢献商品、決して他社品に浮気なさらない。

 

競合米国系T社はAQL方式、即ち<不良混入前提>。 だからT社品

を使い続けたメーカーは市場で機能不良多発、即ち IS。 調べて彼ら、

全くトラブル無しのメーカー IS NOT があることに気付く。 えっ?!

 

IS NOT はどこのサーモを使ってるんだ? バラせば一目瞭然、直ちに

「売って下さい」、お客様の方から我が社を訪ねて来られる。

 

が、サーモ屋はお詫びするのみ。 今季はすでに予定数完売、お役には

立てません。 そこを何とか、、 申し訳ありません、私ども夜は家に

帰って寝ます、日曜日は神様もお休みで、、 と<断わる営業マン>風。

 

じゃ、増員を、、 いいえ、サーモ向きの人間は急には見つかりません、

それに、急には育ちません。 第一、規模拡大は考えておりません、、

          (というところは125号にも書きましたっけ)

 

<今のお客様>へのサービスに完璧を期する方針なので、、と譲らない。

オーナー経営者だから通せた、とも言えますが、品質は人柄。 限って

言えば<トップの人柄>の反映です。

 

トップが不退転の決意で臨まない限り、品質は生めない、維持できない、、

 

**********

 

 

 

●そう言えば<リエンジニアリング>も

 

たいして盛り上がること無く過ぎ去りましたな。 ♪ナンデダロー?♪

 

その成功の絶対条件である<トップ・ダウン的リーダーシップ>の欠如

のせい、でしょうな。 問題意識も具体的なビジョンも無い、そのため

影響力や推進力に欠け、<抵抗勢力>を圧倒することも出来ない。

 

真の勇気が無いから、ちょっとイジルくらいは出来ても<根本的変革>

なんか出来っこない。 市場の変化に応じて<絶えず変革する>継続性

や持続力が無い。 到底<リエンジ>にはなり得ないわけ。

 

中にはパワハラ的に<絶えず>組織を<変革>する例はあるが、何回目

かには元に戻ったり、で<新しい>や<創造>には無縁。 失敗は当然。

 

<ベストプラクティス>を見つけ出しては取り込む<シックスシグマ>

は必ずしも<新し>さや<創造>力を要しないが、トップの勇気と指導

力は不可欠。 結局この国では、<シックスシグマ>も短命でしょう。

 

 話を冒頭の番組に戻すと、<現場力を高める>方法は(第94号既述)

 鳥取三洋電機の<一人屋台方式>類似。 平均的能力を超えた人々の、

 平均以上の努力に依存する悲壮な案でした。 作業者イジメ、みたい。

 

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サーモ屋は単細胞的で、あまり色々やらなかった、いや、出来なかった。

が、やることを限定し、隅々にまで徹底し、それが成功のもとになった。

Rational Process も<シックスシグマ>も、その要領です。

 

色々するより、この仕事ではここをこう押さえよう、と絞って攻めるに

限る。 サーモ屋は統計数学のイロハやPAの IS / IS NOT もどきで

ノウ・ハウを確立し、Dependability No.1 の定評を得た、、

 

まずは<得意技>を一つ持つこと。 それが技法マスターのコツであり、

<継続は力なり>のもとであり、成功への早道。 <不退転の決意>で

取り組めば、広げる、深める、は時間の問題です。

                          ■竹島元一■

 

    ■今週の<私の写真集から>は ★PROBABILITY★

 

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